洋服の右前と左前の起源は?
洋服は、男物は右前であるのに対し、女物は左前と、前合わせが逆になっている。このように男女で合わせが逆になっている衣装は、洋服が世界中で着られている現在においては半ばグローバルスタンダードのように見られているが、本来は世界的に見てもかなり珍妙な部類に属するようである*1。洋服がこのようになっている理由は何なのだろうか?
まず、男物が右前なのは、そもそも衣装というものは世界的に見て「特に理由が無ければ、原則として右前。但し弓をよく使う騎馬民族は原則左前。」という傾向があるらしいので、特に不思議な点はない。なお、上記のような傾向は、社会の多数派を占める右利きの人に便利なように、という傾向に基づいている。
問題は女物が左前な点である。これには、以下のような二通りの説があるらしい。
- 本来は女物も右前だったのだが、1890年頃に突如として左前になった。経緯や理由は不明。
- 中世ヨーロッパにおいてボタンが登場した時、女性が服を着せてもらったり脱がせてもらったりしやすいようにするため。
世間一般には後者の説が有力なようで、高名(?)な先生方もしばしばこの説を唱えているようであるが、個人的には前者の説が具体的な年代もあって信憑性が高い気がする*2。
なお、洋服のボタンに関連して、以前どこかで「19世紀末頃(女物が左前になる頃)まではボタンは男のもので、女がボタン付きの服を着ることは道徳的に許すまじきことだった」という話を見た気がする。記憶が非常に曖昧ではあるが、もし本当なら左前について前者の説を補強するものかもしれない。