訓民正音(ハングル)によるアイヌ語表記案

アイヌ語は一般にはカタカナかローマ字で表記されます。
しかし、アイヌ語の音体系は、音節はCVC及びCVを基本とし、
清音と濁音の区別がなく、内破音がある等、韓国語(朝鮮語)とよく似ています。
そのため、一部ではアイヌ語表記に最も適切なのはハングル、という意見もあるようで、
私もその意見に賛成です。


しかし、実際にアイヌ語をハングルでどう表記するかについては、
例文付きの具体例等は私の知る限りでは存在していませんでした。
それで、自分なりの表起案を前々から考えていたのですが、
この度それを大学サイトにupしました。


訓民正音(ハングル)によるアイヌ語表記案


ここにも字母音価を載せておきます。

子音の字母は以下のとおり。括弧内は「CDエクスプレス アイヌ語」で用いられているローマ字表記。ㅊは外来語(日本語等)でのみ用いる。ㅌ、ㅍ、ㅊの音価は韓国語での音価と大きく異なるので注意。

  • ㄱ(k), ㄴ(n), ㄷ(t), ㄹ(r), ㅌ(y), ㅁ(m), ㅂ(p), ㅍ(w), ㅅ(s), ㅈ(c), ㅊ(TS), ㅇ(-), ㅎ(h)

母音の字母は以下のとおり。ㅑ、ㅕ、ㅛ、ㅠは外来語(日本語等)でのみ用いる。ㅡは感嘆詞と外来語(英語等)でのみ用いる。ㅓ、ㅕ、ㅡの音価は韓国語での音価と異なるので注意。

  • ㅏ(a), ㅑ(YA), ㅓ(e), ㅕ(YE), ㅗ(o), ㅛ(YO), ㅜ(u), ㅠ(YU), ㅣ(i), ㅡ(-)

ㅡは外来語等で用いる場合はㅜ(u)と発音?


なお、字母の順番は本来のハングルと異なっていますが、
この順番には意味があります。


この表記の主な長所は、

  • PCで通常表示可能なハングルの範囲内で表記できる。
  • (야,ㅣ等を用いる場合に比べ)形態主義的表記にした場合、字母と発音の対応が明確。

といったところだと思います。
一方、短所は

  • 字母の中に韓国語と発音が異なるものがある(韓国語式表記との互換性が低い)。
  • (야,ㅣ等を用いる場合に比べ)画数が多くなりがちで書くのが面倒。

といったのが挙げられると思います。

短所のうち前者は、「同じ文字が言語によって異なる発音をする」ということはローマ字(ラテン文字)等でもよくあるのでそんなに問題ないと思いますが、問題はけっこう深刻な問題かもしれません。


最後に、上記ページでも挙げているアイヌ語表記の例のうち、
アイヌ神謡集収録ユカラ一覧を載せてみます。

가뭍지갑 가뭍 탙어투갈, "시로가니버 란란 빗간"
지론눕 탙어투갈, "도파 도파 도"
지론눕 탙어투갈, "핱군덜거 핱고시덤두리"
이서보 탙어투갈, "삼바타 덜거"
니닫올운버 탙어투갈, "하릳 군나"
본 홀겊가뭍 탙어투갈, "호더나오"
뭍지갑 가뭍 탙어투갈, "곤구파"
러분 가뭍 탙어투갈, "아둩가 도마도마기 군두더아시 흠 흠!"
덜거비 텉어투갈, "도로로 한록 한록!"
본 오기길뭍 탙어투갈, "굳니사 구둔구둔"
본 오기길뭍 탙어투갈, "다노다 후러후러"
어사만 탙어투갈, "갑바 렆렆 갑바"
비바 탙어투갈, "도누버가 란란"