パレスチナと非武装化
今日は時事問題について。
6月15日付の中国新聞*1夕刊に、イスラエルのネタニヤフ首相がパレスチナ国家樹立を非武装化を条件に容認すると演説したという記事が載っていた。記事によると、イスラエル側は「パレスチナの非武装化や、パレスチナ難民がイスラエルに帰還しないことなど」を条件とし、それに対しパレスチナ側が反発。パレスチナ側は非武装化に一定の理解を示す一方で、イスラエルをユダヤ人国家として認めることは難民帰還問題、イスラエルのアラブ系住民の権利問題から拒否しているという。
上記記事からすると、パレスチナ側は「非武装化」は必ずしも断固拒否はしていないが、非武装化以外の諸問題について断固拒否している、と捉えられる。しかし、ネット上のニュースでは、「非武装化」についても強く反発していると書いてあるものもあった。
パレスチナ側はネタニヤフ首相の演説の何に反発しているか、記事を集めてみた。何に反発しているか明らかでない記事も相当数あったが、以下では何に反発しているか明記してある、或いは容易に読み取れる形のもののみ取り上げる。
まずは、反発の理由について直接取り上げられているのが「非武装化」ではないもの。
http://japanese.cri.cn/881/2009/06/15/1s141948.htm
http://jp.reuters.com/article/domesticEquities2/idJPnTK848047720090615
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090615AT2M1500M15062009.html
http://jp.ibtimes.com/article/biznews/090616/36126.html
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2009061602000065.html
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00157203.html
- パレスチナにとって、イスラエルをユダヤ人国家と認めることは、パレスチナ難民がイスラエルに帰還できなくなることを意味することなどから、アッバス議長は、「世界が取り組んできた和平への取り組みを破壊するものだ」として、早速反発している。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2009061502000044.html
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090615AT3K1500315062009.html
- ネタニヤフ首相はパレスチナ側に対し、イスラエルをユダヤ人国家と認めるよう求めるとともに、エルサレムを分割せずイスラエルの首都とする方針も示すなど、事実上、和平交渉のハードルを上げた格好。パレスチナ側は強く反発しており、和平交渉再開にはなお時間がかかりそうだ。
http://mainichi.jp/select/world/news/20090615dde001030056000c.html
http://wnww.ntv.co.jp/news/137658.html
http://mainichi.jp/select/world/news/20090616ddm007030164000c.html
大半の記事では「エルサレム問題」及び「パレスチナ難民の帰還問題」の両方が直接触れられている。
一方、反発の理由について「非武装化」に触れたものは、数が限られているが、しかし存在している。
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090616AT2M1502815062009.html
http://sankei.jp.msn.com/world/mideast/090615/mds0906150837002-n1.htm
- パレスチナ側は、将来の主権国家の自衛権など国家としての基本的権利を「非武装化」という形であらかじめ否定されることに強く反発しており、イスラエルを「ユダヤ人国家」と明示的に認めることについても、難民の帰還権をめぐる交渉の可能性を排除する狙いだとして拒否している。
http://www.asahi.com/international/update/0615/TKY200906150001.html
イスラエル側の主な条件は、要約すると「エルサレムは全てイスラエル領」「パレスチナ難民の帰還は認めない」「非武装化」の三つになるであろうが、これらのうち「非武装化」は他の二つに比べて受け入れられないことなのか受け入れられることなのか。個人的にはやはり「エルサレムは全てイスラエル領」「パレスチナ難民の帰還は認めない」がパレスチナ側が最も受け入れられない点ではないかと思う。
なお、イスラエル側にとっては「非武装のパレスチナ国家」でさえ、必ずしもただちに受け入れられるものではないようである。
パレスチナ問題解決への道の険しさを、あらためて感じる。