今日は政治ネタ
今日は微妙に政治関係のネタでいきます。
日本国憲法に否定的な人の中には、日本国憲法とスターリン憲法の類似性を指摘し、「日本国憲法はスターリン憲法だ」と主張して日本国憲法を批判している人がいるようです。具体的な両憲法の類似点としては、
- 自由や民主主義を重視している。
といった点が挙げられているようです*1。しかし、日本国憲法下の日本には自由や民主主義がそれなりに存在しており、スターリン憲法下のソ連に自由や民主主義が全くと言っていいほど存在していなかったことは、万人の知るところでしょう。
つまり、日本国憲法とスターリン憲法は、少なくとも現在の日本と当時のソ連を見比べてみる限りでは、それぞれに基づいた国家のありかたが全く異なっていることになります。
では、日本国憲法とスターリン憲法の類似性は、何が問題なのでしょうか? 次の二つが考えられます。
他にもあるかもしれませんが、とりあえず以上の二つを挙げておきます。前者についてはとりあえずノーコメント。後者については全くの詭弁でしょう。もし本当に後者のような状況であれば、日本は以下のような国になっているはずです。
- 国民は政府与党に指導されなければならない。
- 選挙には政府与党の認めた候補しか立候補できない。
- 政府与党以外の政党活動は一切禁止。
- メディアは政府の意向に沿った報道をしなければならない。
- 出版物は全て検閲。
- 政府に批判的な言動をする人は死刑。
- その他なんとなく都合悪そうな人は強制収容所送り。
- 場合によっては暗殺。
- 日本は世界で最も偉大な国である、とされる。
- 従って全世界は日本化されるべきである、とされる。
- 芸術は日本を讃えるものでなければならない。
- 芸術は写実的(但し美化された)で且つ壮大なものでなければならない。
- 抽象的要素、批判的要素を含む芸術は禁止。
- 在日韓国朝鮮人は全員僻地に強制移住。
- その他都合の悪そうな外国人も強制移住。
- 日本語以外の出版物は持ってただけで逮捕。
これらをまとめると、「全体主義」「国粋主義」「外国人排斥」の三つでだいたいまとめることができるでしょう。
しかし、日本は現実にはそのような国には、とりあえずなっていません。また、日本国憲法下で今後そのような国になる可能性も恐らく非常に低いでしょう。さらに言えば、恐らく日本国憲法とスターリン憲法の類似性を指摘する人の中には、日本が以上のような国になることを危惧する人はほとんどいないのでは、と思われます。日本国憲法に否定的な人にとって、現在の日本とスターリン体制下のソ連の共通点は、おそらくは「その人にとっては共に気に食わない」ということくらいでは、という気がします。
さて、以上に挙げた「スターリンな日本」の具体的な姿の中には、日本のいわゆる右寄りの人が実現を願ってそうなものがいくつか含まれています。現在の日本で日本国憲法に批判的な人も、概して右寄りです。
一言で右派と言っても、いろんな主義主張の人がいるので、日本国憲法に批判的な人が「全体主義」「国粋主義」「外国人排斥」のいずれかまたは全部を主張しているかどうかは謎なところでしょう。しかし、仮に両者を同じ人が主張していたとしたらどうでしょうか? その人は、「日本の脱スターリン体制化」を主張しつつ、実際には「日本のスターリン体制化」を押し進めようとしていることになります。
主張と行動が矛盾しているようですが、この手の矛盾は比較的一般的な政治手法な気がします。スターリンがソ連を「世界で最も民主的な国」とアピールし、その一方で極めて非民主的な個人独裁を確固たるものにしていったのは、その典型でしょう。