冥王星は「惑星」→「超海王星天体」ということで。

ブログをいろいろ見ていると、冥王星が惑星でなくなったことに関して、

といった意見が見られる。冥王星を惑星から削除するのを歓迎する意見としては、

  • 太陽系は冥王星まで、という誤った知識が改められる。

というのがちらほら見られるが、これでは

という今まで以上に誤った知識が広がりかねない。太陽系の範囲は未発見ではあるが有力な仮説によれば「オールトの雲」までであり、発見済みに限ってもセドナという天体が発見されており、いずれにせよ海王星(あるいは冥王星)は太陽系の果てから見るとずっと内側に存在している。

ということで、冥王星が世間から忘れられることも教科書から削除されることもないようにするというのは、かなり切実な課題である。どのようにすれば良いかというと、やはり「なんかすごそうな名前」をつけることが重要なように思える。ということで、タイトルにあるように

というのを提案したい。「超海王星天体」とは「trans-Neptunian object(TNO)」のことである。冥王星は以前からTNOに分類されており、この提案の新しい部分はTNOの訳を「超海王星天体」とすることである。TNOは従来は「海王星以遠天体」(wikipediaの場合)とか、「トランス・ネプチュニアン天体」(はてなダイアリーの場合)とか訳されていたが、前者はイマイチぱっとしない訳であり、後者は英語の発音そのままで訳と言えるものではない。しかし「超海王星天体」なら、「海王星を超えた存在」みたいですごそうである。あるいは、別に日本語名は英語名を直訳したものである必要は無いので、

  • 冥王星は「惑星」から「超惑星」へ。

とするのも良い。「超惑星」とは、太陽からの距離が一般的な惑星(具体的には海王星)を超越している天体のことであり、英語の「trans-Neptunian object(TNO)」に相当し、直訳するなら「trans-Planetary Object」であろう。「超惑星」なら「惑星を超えた存在」となる。何が惑星を超えているのかと言えば、太陽からの平均距離がである。

以上のように「trans-Neptunian object(TNO)」の日本語訳として「超海王星天体」または「超惑星」という名称を用い、冥王星をその代表格とし、更にメディアや教科書で「超海王星天体」(または「超惑星」)を大々的に宣伝すれば、冥王星は忘れ去られるどころか、ひょっとすると天王星より有名な天体となり、また太陽系への世間一般の理解も従来よりかなり深まるだろう。

とりあえず、以下に冥王星の簡単な紹介文案を載せる。

冥王星
海王星天体(trans-Neptunian object, TNO)の中で最大級の天体の一つで、エッジワース・カイパーベルト天体に属する。比較的大型(直径は水星の半分程度)で太陽にも近い(海王星の軌道より内側に入ることもある)ことから、超海王星天体の中では最も古く(1930年)に発見され、歴史的経緯*1から2006年までは惑星とされていた。冥王星という名はローマ神話の冥府の王プルートに由来するもので、太陽系深層部への入り口に存在する大型超海王星天体にふさわしい名称と言えよう。現在アメリカの探査機「ニューホライズンズ」が、2015年の到着を目指して冥王星に向かっており、到着の暁には冥王星は我々に超海王星天体に関する多くの知識をもたらしてくれるだろう。

*1:アメリカがだだをこねたから。。。と言いたいところだが、(1)最初はもっと大きいと思われていた。(2)小さいとは言っても当時最大だった小惑星セレスよりかはずっと大きかった。(3)類似の天体が1990年代に入るまで発見されなかった。といったのが実際の事情だろう。(3)の類似の天体が発見されてから十年少々で惑星から除かれたので、「アメリカがだだをこねた」は惑星とされた理由にはならないだろう。