個人と集団

或る特定個人に対して強い憎しみを抱くことは、
或いは人間という存在にとって避けられないことかもしれない。
しかし、不特定多数であれ特定少数であれ複数の人間に対し、
その個々人にではなくその集団に由来して強い憎しみを抱くことは、
それもやはり避けがたいことかもしれないとはいえ、恐ろしいことである。
個々の人々にはそれぞれ各々の人生、価値観、生活がある。
しかし、人間の集団に対して憎しみを抱く場合は、
すべてを「集団」という一つのものの中にひっくるめてしまい、
個々の人間の事情も知らずに、否、むしろ知らないからこそ、
その集団に属す人間に対して無限に敵意を募らせてしまう。


このような不幸を避ける方法は、個別になら存在しうるであろう。
しかし、人間個々人に由来しない憎しみを避ける一般的方法は、
果たして存在しているのだろうか?