民法772条改正案

民法772条の「離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子」という推定に起因するもろもろの問題については、以前からそれなりに関心があり、この問題をどうにかできないかということは以前からいろいろ考えていましたが、とりあえず自分なりの改正案を考えてみます。私は法律の専門家ではない&社会的影響力を持ってないので、どなたか法律に強い方、具体的な文面を考えてください&どなたか社会的影響力のある方、政治家に圧力をかけてください。以下に概要を示します。

1.現在の問題点

実例に基づくものではないのですが、以下で二通りのケースを考えてみます。

(その1)
AはBと法律上婚姻関係にあったが、Bは遊び好きで家にほとんど帰らず、たまに帰ってきてはAに理不尽な要求をつきつけ、AとBの結婚生活は事実上破綻していた。このような状況の中で精神的に追い詰められたAは、友人のC(未婚)に悩みを相談していたが、やがてAとCは親密な関係になり、二人の間に子供ができることになった。この妊娠を期にAはBに離婚をつきつけ、Cと結婚することとした。


この場合、Aが男(BとCは女)の場合、Aはそんなに苦労せずにCと共に新たな家庭を築くことができます。しかし、Aが女(BとCは男)の場合、AがCと新たな家庭を築くには多大な労力が必要となります。何故ほとんど同じ状況におかれていても、自分の性別がどうであるかでAの苦労が全く変わってしまうのか。これは非常に問題だと思います。

(その2)
AはBと法律上婚姻関係にあったが、Aは遊び好きで家にほとんど帰らず、たまに帰ってきてはBに理不尽な要求をつきつけ、AとBの結婚生活は事実上破綻していた。そうこうしているうちにAとその遊び相手のC(未婚)との間に子供ができることになり、AはBを捨ててCと結婚することとした。

この場合、Aが男でも女でも、Aは離婚に際していろいろと苦労することになることが予想されます。しかし問題はその後です。Aが女であれば、Cとの間にできた子供についても、Bとの婚姻関係に由来する問題でいろいろと悩まされることになりますが、Aが男であれば特に悩まされることはありません。この場合も、Aは自分の性別次第で苦労する羽目になる度合が大きく異なってしまい、非常に問題だと思われます。

以上のように、民法772条は現状では、同じ状況下において女性に極めて不利に働きます。なんらかの対策が必要でしょう。

2.解決方向

民法772条の規定で理不尽な不利益を被る人がいる一方で、この規定により理不尽な不利益を被らずに済んでいる人がいることも確かです*1。また、この規定により不合理な利益を得ている人もいるかもしれません*2。不合理な利益についてはとりあえず置いておくとして、現在の民法772条により不利益を被らずに済んでいる人が今までどおり不利益を被らないで済むようにすることが重要だと思われます。

3.解決案

民法772条改正案

実子は、母と父の合意に基づく申し出によって認める。申し出が無い場合、妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2  婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

772条と関連した条文の改正案

774条 第七百七十二条の場合において、夫は、子が嫡出または非摘出であることを否認することができる。

以下、775〜777条も同様に改正。

733条 女は、前婚の解消又は取消しの日から100日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
2  女が前婚の解消又は取消の前から懐胎していた場合には、その出産の日から、前項の規定を適用しない。また、懐胎している子の実父と再婚する場合は前項の規定にかかわらず再婚することができる。

4.改正案の趣旨

772条は、第二項の300日規定ではなく、第一項のほうを改め、「実父がいると申し出のあった場合は実父の子、特に無ければ夫の子」とします。申し出は「母あるいは父」ではなく「母および父」です。片方だけだといろいろ不正が発生しそうなので*3、双方が合意しないといけないものとします。

774〜777条は、「摘出」という単語を「摘出または非摘出」に改めます。前夫(または夫)が勝手に子供を他人の子供ということにされた時に、異議申し立てができるようにするためです。

733条は、第二項に懐妊している場合は子の実父とすぐに結婚可とする規定を追加します。現時点でも離婚後出産していれば再婚禁止期間にかかわらず再婚可能ですし、また離婚した相手との再婚も可能なようなので、このような規定はあってしかるべきだと思います。また、上記772条改正案との整合性からも必須だと思います。なお、以上の話とは別に、第一項の再婚禁止期間を最近の議論にあわせて六箇月から100日に短縮しています。




とりあえず以上のような感じです。以上の案について、改善点その他コメントをいただけるとうれしいです。但し最近忙しく返信が大幅に遅れる可能性があるので、その点はご了承ください。

*1:例えば出産前に夫と死別した人とか。

*2:例えば離婚直前or直後に誰かと子供を作って云々、とか。

*3:例えば遺産目当てで関係ない男を「実父」にしてしまう母が現われるかもしれないし、遺産を渡さないために関係ない男に「実父」を名乗ってくれと頼む夫家族が現れるかもしれない。