太陽電池の将来

(今回の話は、大雑把な内容です。具体的な数値等には大きなズレがあり得ますので、あらかじめご了承ください。)


近年、太陽光発電が従来の化石燃料に代わる新たなエネルギーの一つとして注目されている。太陽光発電を行う太陽電池の生産量は近年急激に増加しており、日本は世界屈指の太陽電池生産国として多くの太陽電池を輸出している。

さて、太陽電池は今まさに大量生産が始まろうとしているが、太陽電池は比較的寿命が長いとはいえ、いつかは寿命が来る。数十年後には、寿命となった太陽電池が大量の廃棄物として現れてくるはずである。これらの使えなくなった太陽電池をどうするか? 結論から言うと、それらの太陽電池廃棄物は新たな太陽電池を作る上での「宝の山」となる可能性がある。

現在、太陽電池を作る上でのコストの大半は、高純度の単結晶シリコンを作る部分に集中しているであろう。シリコン、すなわちケイ素(Si)原子自体は、岩石の主要成分として化合物の形で地球上にほぼ無尽蔵に存在している。しかし、そこから単体のケイ素を取り出し、更に太陽電池に使える程度に純度を高めた単結晶シリコンにするには、莫大な電力が必要となる。太陽電池を作るには、概ねその太陽電池が一年間で発電できる電力と同程度の電力が必要になる。太陽電池が数十年間使えることを考えればエネルギー収支は素晴らしいが、しかし一年分の電力というのは依然として膨大なエネルギーである。

ところで、太陽電池の寿命は数十年間と見積もられているが、そもそも太陽電池に寿命が存在するのは、発電を行う素子であるシリコンそのものの経年による劣化や、シリコン以外の部品の劣化・老朽化によって、太陽電池の性能が落ちることによる。ここで、シリコン以外の部品の劣化・老朽化が性能低下の主な原因の場合、シリコンはそのままで他の部品を取り替えてやれば、太陽電池は再び息を吹き返すことになる。また、シリコンそのものの劣化が原因の場合でも、劣化したシリコンを取り出してもう一度高純度の単結晶にしてやれば、やはり太陽電池はよみがえることになる。

寿命の来た太陽電池の劣化したシリコンは、劣化しているとはいえ、依然としてかなりの純度を持ったシリコンである。そこから再び高純度シリコン単結晶を作ることは、化合物から単離したばかりの低純度のシリコンを高純度単結晶にするよりも、より少ない電力ですむだろう。ましてやゼロから、すなわち天然の岩石からシリコン単結晶を作ることに比べれば、太陽電池作成に必要な電力の節約量は極めて大きい。

日本は太陽電池の製造量は世界屈指でも、国内への太陽電池の設置は必ずしも他国に比べて多くない。しかし、今設置されている太陽電池の寿命が来る時、まさにその寿命の来た太陽電池廃棄物がいかに多く存在しているかが、新たな太陽電池供給の勝負をコスト面でも環境面でも握ることになるかもしれない。