小選挙区比例代表連用制は大政党に優先的に議席を配分する制度

衆議院選挙制度改革で、主に中小政党が導入を主張している小選挙区比例代表連用制について、メディアは「中小政党に優先的に議席配分する小選挙区比例代表連用制」と紹介している。しかし、この表現には「中小政党を不当に優遇する制度」というニュアンスが感じられ、違和感を覚える。

小選挙区比例代表連用制は、比例代表制を基本としてそれに小選挙区的な要素を加えた選挙制度であり、単純小選挙区制や現行の小選挙区比例代表並立制と比べると中小政党に有利な選挙制度である。しかし、純粋な比例代表制や、ドイツなどで用いられている小選挙区比例代表併用制と比べると、大政党にやや有利な選挙制度となっている。

小選挙区比例代表連用制は、ドイツなどで用いられている小選挙区比例代表併用制と基本的には同一の選挙制度である。連用制も併用制も、まずは比例代表で各党への議席配分を決め、各党は割り当てられた議席にまずは小選挙区で当選した議員を割り当て、残りの議席に比例名簿の議員を割り当てる。ただし、小選挙区で大勝した党の場合、比例代表で割り当てられた議席よりも小選挙区で当選した議員のほうが多くなってしまう場合がある。例えば定員が10の議会において、ある党が小選挙区で6人当選し、比例代表で50%(5議席分)の得票を得た場合などである。この問題をどう処理するかという点に連用制と併用制の違いがある。

ドイツで用いられている小選挙区比例代表併用制においては、上記の例のように比例代表での議席割り当てが5議席であるにもかかわらず小選挙区で6人当選した場合、6人全員に議席を与え、且つ比例代表での議席割り当てを越えた分については議会全体での超過の議席とする。つまり、上記の例では議会は定員11となり、そのうち6議席をこの党は得ることになる。議会全体での議席が増え、且つその増加分を小選挙区で大勝した大政党が獲得するので、小選挙区比例代表併用制は純粋な比例代表制と比べると、若干ではあるが大政党に有利な選挙制度と言える。

一方の小選挙区比例代表連用制は、小選挙区において当選した議員全員に議席を割り当て、且つ併用制において発生する超過議席を認めない制度である。例えば、上記のように定員が10の議会においてある党が小選挙区で6人当選し、比例代表で50%(5議席分)の得票を得た場合には、この党が10議席中6議席を獲得し、残り4議席を他の党で分け合うことになる。つまり小選挙区比例代表連用制においては、比例代表で割り当てられた議席よりも小選挙区で当選した議員のほうが多い党が存在した場合、議会の議席はそのような大政党に優先的に割り当てられ、その分中小政党に割り当てられる議席比例代表で割り当てられた議席よりも減少する。単に大政党が比例代表による議席数より議席を増やすだけでなく、中小政党がその分本来の議席数よりも議席を減らすため、小選挙区比例代表連用制は併用制よりもより一層大政党に有利な選挙制度と言える。

このように、小選挙区比例代表連用制は大政党に優先的に議席を与え、その分中小政党に割り当てられる議席を削る選挙制度であるので、「中小政党に優先的に議席配分する」という表現は実態とは逆のように思われる。

なお、小選挙区比例代表連用制は上記のように大政党を優遇し、その分中小政党にしわ寄せの来る選挙制度ではあるが、その度合いが著しく大きいということは基本的には無い。よって、大政党に多少有利でありはしても、それをもって民意を歪める選挙制度と言うまでのことは無いと思う。ただし小選挙区議席数が全議席の大半を占める場合については、大政党への有利さは中小政党が甘受すべき程度を越えることになるかもしれない。